過去の岡山県議会一般質問集 <農林水産業振興>篇

<平成26年6月定例会>(2014年6月24日)

(佐藤)  続きまして,藤田のパイプラインについてお伺いいたします。
 昨年の9月定例会で,岡山県有数の穀倉地帯である岡山市南区藤田地区のかんがい排水事業,いわゆる藤田パイプラインについてお伺いいたしました。約30年の歳月をかけて一応完成した国営かんがい排水事業に続いて,支線となる県営かんがい排水事業を整備しているのは,地域に独自性がある三湛四落という言葉に象徴されるように,大区画の水田地帯においてかんがい排水施設の再編整備を行って用排水分離を行って営農の労力の節減を図るとともに,いわゆるこの水田の汎用化によって農業経営の安定化を目指しているからでございます。言ってみれば,水道の蛇口をひねるように自由に農業用水を使うことで水田の汎用化,転作を図るというのがポイントになりますが,TPP交渉もある中で,日本の,あるいは岡山の農業の未来を担う私は極めて重要な地域であると思いますし,また極めて重要な施策であると考えますと申し上げてまいりました。そして,昨年,試験通水のときに問題が生じたことから,市,県,国の協議会をたびたび開催していただき,これは本当に土地改良区の方々にもお世話になって,取水口のネットスクリーンや大曲の用排水機場といった国の施設についても真摯な対応をしていただきました。
 そのことについては心から感謝申し上げるんですが,しかしことしの代かき期,田植え前,田植え期,また一部の箇所で水の出が悪いという事態が発生をいたしました。藤田地区のかんがい排水につきましては,全体で1,400ヘクタール弱の受益面積を持っており,全て供用開始になるのが平成31年を予定しておりますが,既に18年から始まっている藤田都六区,今年度から始まった藤田都大曲,それに加えてこれから29年度から藤田錦六区,31年度からの藤田錦と展開する中で,この段階でこれだけトラブルが生じるということは,そもそも論として国の用水計画,運用方法が本当に大丈夫なんだろうかというふうに思わざるを得ません。最初の計画からもう数十年の月日が流れており,大規模農業と変わってきている状況もありますし,何より当初予定されていた減反政策から飼料米にと国の農業政策も大きく変わってきております。端的に言えば,もはやポンプが足りない状況なのではないでしょうか。国の大曲のポンプに今,害獣であるヌートリアが地域のアイドルのように描かれている姿に私はちょっとむかついておるんですが,改めてこの平成31年全面展開を目指して国の用水計画,運用方法の現状認識,変更の必要性,さらにポンプの増設を強く求めるべきだと思いますが,御所見をお聞かせください。

(知事)  お答えいたします。
 藤田パイプラインについての御質問であります。
 ことしの代かき時の給水は,用水ポンプや配水槽の水位は適正に運用できたものの,一部の圃場で計画どおりには水が出なかったため,国と連携し,水利用の実態調査等その原因究明を行うこととしており,その後,国は用水計画を検討する予定と聞いております。こうした調査結果を踏まえ,国,県,岡山市,改良区がそれぞれの役割分担に応じて対策を講じるとともに,県は市等と連携し,国に対し用水の安定供給対策を図るよう強く要望してまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  どうもありがとうございます。
 その中で,どうしてもこれはもうポンプそのものが足りとらんというふうに感じるわけでございますが,ポンプの増設を国に要望されるかどうかについて端的にお伺いいたします。

(知事)  今回,水の出が悪かったということについては,現在,詳細な調査をしてくれているところでありまして,その調査結果を確認してから検討したいと考えております。いろいろな原因,パイプが詰まっていたのか,それとも高低差,水圧が足りなかったのか,おっしゃられるようにポンプが足りなかったのか,現在その原因についてはよくわかっておりません。まず,その原因をきちんと把握してからそれぞれの役割分担に沿って対応をしていきたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  ありがとうございました。
 藤田のパイプラインにつきましては,それぞれの役割分担というよりは連携が重要だということでございまして,突きとめれば国の数十年前の計画そのものが現状にもう合ってきていないんじゃないかということで,ここで根本的に対応しなくては,県のやってる工法自体も今,問題になっておりまして,サイホン方式のやり方が本当にいいのかということも含めてこれは連携して考えていかなくてはいけないということなので,先ほど児島湾締め切り堤防のときにも申し上げましたが,やはり国に対して県と市の中で県がしっかりとリーダーシップを持って国と交渉していただきたいということを強くお願いしたいと思います。

(佐藤)  次に参ります。
 5月半ば,あるNPOの御提案が県の協働事業に採択されたことを受けて,その基礎調査として旭川の漂着ごみを調査いたしました。そこで,気になったのは,何といってもカワウでございます。後楽園の近く,新鶴見橋の下の河原あたりで羽を広げてのんきそうにひなたぼっこする姿は,我々が子供のころにはそう見なかった風景でございます。カワウは,カツオドリ目ウ科の大型の魚食性の水鳥で,全国の内湾,河川,湖沼などに生息しており,繁殖期,県内では2月から8月と推定されておりますが,木の上に集団で営巣します。カワウによる被害は年々深刻なものとなっており,営巣地では巣づくりによる枝折りや多量のリン酸を含むカワウのふんによって樹木が枯れて,森林被害や景観被害や水質悪化が発生しております。旭川では,特に神武天皇東征の伝えのある児島湾内の高島や中原のあたりの中州はカワウの営巣地と思われ,主要な餌はアユ,また県の絶滅危惧種に指定されずとも,本当に貴重なアオと言われる児島湾の超高級ウナギまで旺盛な食欲で捕食してる姿が目撃されております。
 ところで,このカワウの一大供給源は琵琶湖という説があり,関西広域連合が滋賀県を中心としたカワウの広域的な対策に乗り出した結果,もう一つ危機意識の低い岡山にカワウ軍団がやってきたとも言われております。カワウは何もしなければ,ふえこそすれ,絶対に減ることはありません。そもそも,このカワウを有害鳥獣ときっちりと認識されているか。具体的な生息数調査の結果,被害額,駆除計画を含めた対応策,さらに広域の連携による対応についてお知らせください。
 また,幾ら半分が民地とはいえ,日本創世の神武天皇ゆかりの高島がふん害でぼろぼろになるということはあってはならぬことだというふうに思いますが,対応策をお知らせください

(知事)  お答えいたします。
 カワウの被害についての御質問であります。
 まず,認識等についてでありますが,県内のカワウはことし1月に他の野鳥調査とあわせて実施した簡易調査で3,500羽以上を確認しており,年間5,000万円程度の水産業被害が報告されているほか,お話のとおりふんによる樹木への被害なども発生していることから,有害駆除の対象となっていると認識しております。県では,被害実態の調査や防除技術に係る情報提供を行い,市町村の被害防止計画の策定や内水面漁協などの駆除対策を支援してきたところです。カワウは県境を越えて移動,分布し,広域的な取り組みが必要であることから,本県などからの提案の結果,来月,国と中四国各県が参加するカワウ対策の広域協議会が設立される予定となっております。今後,県においても市町村,漁協,猟友会等の関係者によるカワウ対策協議会を設立し,中四国の協議会で策定する広域的な管理指針に基づき,効果的な対策を講じてまいりたいと存じます。
 次に,高島についてでありますが,カワウなどによる野生鳥獣の被害に対し,市町村は鳥獣被害防止特別措置法に基づきみずから有害鳥獣を駆除できることとなっており,カワウの駆除や営巣地の除去などにより高島の環境保全が図られることから,地元岡山市において適切に対応されるものと考えております。
 以上でございます。



<平成25年9月定例会>(2013年9月18日)

(佐藤)  次に,岡山県有数の穀倉地帯である岡山市南区藤田地区のかんがい排水事業,いわゆる藤田パイプラインについてお伺いいたします。
 この地区では,全国的な米価の下落,農家の高齢化,後継者不足という課題もありますが,児島湾干拓のもとで大規模圃場整備や水利環境もなされており,特に米麦では先進経営体の大規模農家が多く,また,園芸作物として,タマネギ,レタスが導入されて,水田転作作物として,施設ナス,レンコン等の野菜の産地化が進められてきました。ここで約30年の歳月をかけて完成の国営かんがい排水事業に続いて,支線となる県営かんがい排水事業を整備しているのは,地域の独自性がある三堪四落という言葉に象徴されるように,大区画の水田地帯において,かんがい排水施設の再編整備を行って,用排水分離を行って,営農能力,労力の節減を図るとともに,いわゆるこの水田の汎用化によって,農業経営の安定を目指しているからでございます。言ってみれば,水道の蛇口をひねるように自由に農業用水を使うことで,水田の汎用化,転作を図るというのがポイントになりますが,TPP交渉もある中で,日本の,あるいは岡山の農業の未来を担う,私は極めて重要な地域であると思いますし,また,極めて重要な施策であると考えますが,知事の御認識をお知らせください。
 一方で,岡山外環状道路南線の計画があり,工事延伸もされましたが,生活道に埋没するパイプライン工事については,地域の皆様の大変な御協力をちょうだいして,コスト削減と通行どめ期間の短縮等についても,県も努力はされてきました。そして,都・大曲地域において,この5月13日から待ちに待った来年の本格通水に向けて通水試験が始まりました。ブロック別給水による代かきや保給水の給水が行われて,そこまでもごみが多く給水栓の詰まりはありましたが,実は土用干しや給水栓の清掃のための送水停止期間が終わって送水を再開したときに問題が発生しました。思った以上に水が出なかったということであります。一つには,代かき機のようなブロックローテーションによる給水をせずに一斉に給水を開始して,急激な水圧低下を来たし,時間を要したというのは,これは間違いないと思います。送水再開前に県が十分な説明をされなかった,この点については大いに反省していただく必要があるというように思いますが,ただこれに加えて,国の施設,取水口のネットスクリーンや大曲の用排水機場の構造そのものに問題があるんじゃないかという声がございます。!

 まずは,最初の計画からもう数十年の月日が流れており,大規模農業に変わってきている状況もある,改めて用水計画・運用方法について,国から地元へ説明がなされることを強く求めたい。また,同時に,今回発生した事象の原因とその対応について,国に具体的にどう要望するかについて,農林水産部長にお伺いいたします。

(知事)  お答えいたします。
 藤田パイプラインについての御質問であります。
 認識についてでありますが,藤田地域は古くから干拓により造成された岡山県有数の広大な穀倉地帯であり,昭和初期から大型機械化農村として農業をリードしてきた地域であります。また,現在は大規模経営体による土地利用型農業や千両ナス等の施設園芸も行われている地域と認識しております。藤田パイプラインは,お話のとおり,用排水分離により水田の汎用化を図り,生産性の高い土地利用型農業の実現を目的として実施しているところであり,今後とも,藤田地域が先進的な農業地域となるよう努めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(農林水産部長)  お答えいたします。
 藤田パイプラインのうち,国への要望についてでございますが,土用干し後の給水不足については,お話のように,地域において一斉に取水したことに加え,取水口へのごみの混入やポンプの回転数が不安定であるといった施設面の問題も影響しているものと考えております。県では,このような事態を受け,国に対し,土用干し後の最初の給水に係るブロックローテーションを検討し,その運用方法等について地元へ説明するとともに,施設面の問題に対する原因究明と対応策を検討するよう要請してきており,国からは,問題点を認識し,早急に調査に着手すると聞いております。県としましても,来年度からの本格通水を控え,喫緊の課題であると考えており,安定的な用水供給が図られるよう,岡山市等と連携しながら,引き続き国に早急な対応を求めてまいりたいと存じます。
 以上でございます。

(佐藤)  申し上げたいのは,その対症療法的なことではなくて,全体計画の中で,例えば都,大曲,錦,全体が動き出したらどうなるのかという,全体計画を示していただきたいということで,年度ごとに説明会をやるというのではなくて,全体でこうなんだという,そうした説明会をしていただけますかというお話でございます。それは,今やらなくてはいけないことだと思うんで,今年度の説明をするということではありません。全体にこれから全部の地域が動き出したときに,本当にこれだけで容量足りるのか,あるいは防災の面であったり環境の面であったり,パイプライン,あるいは農業用水の果たしている役割は非常に大きいわけでありますが,これから外環状道路を通したり,地域の方の御協力もいただかなくちゃいけない,その中で全体計画がどうなのか。それに対して県と市が何をやるのか,その説明会を開催してくださいというふうに申し上げているんです。



<平成20年12月定例会>(2008年12月9日)

(佐藤)  次に,知事のマニフェストの中で「農林水産業の生産性を高めるとともに,最高品質のくだもの王国おかやまの確立やブランド品目の生産振興と販路拡大を目指す」とされていますが,そのうちあえてマスカットについてお伺いいたします。
 御案内のとおり,マスカット・オブ・アレキサンドリアは,1886年のガラス室での栽培から,120年以上栽培技術の研究・向上に努めて,今も全国の生産量,栽培面積の9割以上を岡山県が占めております。ピオーネなどの参入しやすい品種が伸びるのも本当にありがたいですが,全国で最も名が通っているそのマスカットの栽培面積が落ち込んで13年連続で販売額が前年度を下回っているのが現状でございます。ピオーネの生産面積を目標1,000ヘクタールと掲げる一方で,マスカットは2006年現在で139ヘクタールになっており,特にことしのマスカット栽培は,燃料の高騰に加えて,7月20日以降の加温物の価格が崩れてダメージもあったようでございます。確かに,微妙な温度調整や頻繁な摘粒等,完全にマニュアル化ができず,高度な技術と経験が物を言って,ハウス建設費用がかさむという難しさもございますが,マスカットには種があるからこそ,香りも味も上品でおいしくなる,そこに生産者の誇り,マインドがあります。今こそ生産者,農協,行政が一体となって,さらに単価の高い高糖度マスカットの比率を上げるさらなる取り組みを含めて,くだもの王国おかやまの代表品種マスカットの生産者をバックアップする体制,マインドを示すことが必要だと思います。いかようにお考えでしょうか,知事にお伺いいたします。
 これに関連して,今年度は,平成16年4月に策定された「21おかやま農林水産プラン」の目標年度でございますが,基本方針や生産目標数値がどの程度達成されたのか,さらに次期プランの策定に向けて,例えば農協,漁協,森林組合の生産関連団体と商工組合の協力体制の構築を含めた農業と商店街等商業との連携,さらに工業を加えた農商工連携ということが時代のキーワードになっておりますが,今後の農林水産業の振興にいかように反映されていくのか,農林水産部長にお伺いいたします。


(知事)  次に,マスカット生産者への支援でありますが,マスカットは,先人のたゆまぬ努力と長年培われてまいりました高度な技術によりまして,本県を代表する特産果物といたしまして名声を博してまいりましたものの,近年は,他の大粒ブドウなど競合品目の増加等によりまして厳しい状況にあるものと認識をいたしております。このため,県では,先進的な生産者で組織をいたします果樹研究会の糖度を高める土づくりなど,栽培技術の向上に向けた研究や,非破壊糖度計の導入によります糖度表示の取り組み等を支援いたしまして,最高品質のマスカットづくりと販売単価のアップに努めてきたところであります。今度とも,生産者が誇りと希望を持って栽培に取り組めるよう,農業団体等と連携をいたしまして,マスカットが将来にわたってくだもの王国おかやまを牽引し,世界に通じるブランドとなりますように発展させてまいりたいと考えております。

(農林水産部長)  農林水産業の振興に関し,農林水産プランの達成状況等についてでございます。
 このプランでは,高品質で安全・安心な農林水産物の生産振興や地産地消の展開等を基本方針に定め,各種施策を推進してきたところでありますが,農家数の減少や高齢化,農産物価格の低迷,燃料や飼料等の原材料の高騰,またノリやカキでは海水温上昇の影響などにより,多くの品目で生産目標の達成は厳しい状況にあります。このため,今年度改訂予定の農林水産プランには,お話の農商工連携など,多様な産業との連携といった新たな切り口も盛り込む必要があると考えております。具体的には,商店街での県産農林水産物を利用した6次化商品の販売や地産地消運動の展開,さらには生産者団体や産業支援機関,食品企業等で組織するおかやま食料産業クラスター協議会による市場性の高い食品の開発等を一層推進し,本県農林水産業の振興を図ってまいりたいと存じます。



<平成18年2月定例会>(2006年3月9日)

(佐藤)  さて,私は生まれも育ちも岡山市中心部,後楽園で産湯をつかっておりますので,あえて言えばこれ自体も死語でございますが,岡山の自称シティーボーイでございます。ですから,幼時の記憶の中にビルや路面電車はございましても,田んぼというのがございません。それでも昨今の国の農業施策について,何か農業に従事する方の楽しみや喜び,もっと言えば心の部分をどこか大切にしていないのではないか,そんな気持ちがいたしております。昨年3月の「新たな食料・農業・農村基本計画」の策定,9月の農業経営基盤強化促進法の改正,さらには10月の「経営所得安定対策等大綱」の決定,そして平成19年産からこれは幾らか緩和されるものの,日本型直接支払制度である品目横断的経営安定対策が実施されます。これらは,認定農業者や一定の要件を満たす集落営農組織などを農業の担い手として位置づけして,担い手が主体となる農業構造改革を加速させる一連の流れであり,この数年が事実上の農政の大転換期になります。
 思い起こせば,この激動は平成14年の「米政策改革大綱」の決定が始まりでありました。「米政策改革大綱」の根本は,構造改革の一環として,平成22年を目標に米づくりの本来あるべき姿を目指して,要するに市場原理にゆだねるということでした。そしてその後の施策は,大規模農家に対しては行政も積極的に支援しますよ,ということであります。端的に言えば担い手の育成ができない,あるいは集落型経営体への移行や転作等,時代に対応できない,そうした小規模農家は,これからはあるいは淘汰されてしまうかもしれないということであります。換言すれば,非常に使いたくない言葉でございますけれども,いわゆる勝ち組と負け組が農家でも生まれてくるのではないか。そうでなくても,右肩下がりの米価,好調な輸出の見返りのように自由化されて廉価な輸入農産物が増加しています。さらには,昨年来の原油高も直撃しています。改革には痛みが伴う,これは仕方がないにしても,まさに担い手不足が叫ばれる特に高齢化した水田農家,小規模農家においては悲鳴に近い叫び声が聞こえてきますが,知事はこういった一連の流れと農家の現状についていかような認識をお持ちでしょうか。
 また,意欲のある担い手を確保して育成していくという施策の重要性は非常に理解できるわけでありますが,最後は家族労働が一番機動的な農業に,例えば,あたかも救世主のように建設業者,高齢者の方々,団塊世代の定年退職組の方々が参入すべきだという発想自体,基本的に専業農家の方にとってはちょっと寂しいなと,どう考えているんだろうかという声がございます。まずは農家に生まれた若い世代の方々が,十分に自分たちは農業でも食っていけるんだと,そういった夢と誇りが持てる仕組みこそが重要であると考えますし,そういった中では兼業農家の位置づけも重要であります。その点についての御所見をお聞かせください。
 加えて,具体的なことでございますが,退職者の方などが新たに農業に参入しようとするとき,ネックとなるのが農地法の規定であります。農地の権利を取得するには,現在は50アール以上の農地を取得しなければならないという,いわゆる下限面積の要件が定められていますが,この規定が新たに農業に参入しようとする方にとっての障壁となっているのではないでしょうか。昨年9月に農地法施行規則が改正されて,一定の要件を備えれば都道府県知事が10アール以上の面積で下限面積を定めることができるというように要件が緩和されましたけれども,県下の下限面積の見直しをお考えでしょうか,農林水産部長にお伺いいたします。
 また,昨年,単位農協まで参加されて担い手対策推進本部を発足されたとのことでありますけれども,地域の農地情報を細かく把握している市町村が主体となって,地域の実情に応じてきめの細かい農地情報の提供や農地の利用をあっせんするシステムをつくるべきだと思いますが,県としてどのように取り組まれるのか,農林水産部長にお伺いいたします。
 また,高齢者の方々にとって,農業は自然の中である意味心地よい汗を流して生き生きできる,こう言ってはどうかと思いますが,最大の福祉施策でもあります。一口に農地といっても,条件がよくて効率的に営農ができるところばかりではありません。本格的な高齢社会の到来を考え,農業従事者の高齢化の中で,いわゆる生きがい農業とも言える部分も大切であると考えます。こういった観点についてはいかようにお考えでしょうか,農林水産部長にお伺いいたします。
 また,さまざまな農家の方々の声をちょうだいいたしました。農業経営基盤強化促進法において農業経営改善計画が認定されれば,いわゆる認定農業者になって,長期低利資金の融通や農地の利用集積の支援等の施策によって,その経営発展を重点的に支援すると行政はうたうわけですが,改良普及資金等を借りる場合は必要だけれども,法人化,認定農業者になることを行政が熱心に勧められる割には,なかなか当事者にとってはメリットがわかりにくい,そんな声がございます。また,農業改良普及センターでやっていただいている技術指導,優良事例の紹介などは本当にありがたいことですけれども,一方で,人員削減で普及指導員の方々が現場に出てこられる時間がないのではないか,机上のデータを示していただくよりも,現場に足を運んでおのれの経験に裏打ちされた指導をしてほしい,そんな声もありました。また,農薬の一斉防除など画一化される割に米価は下がり続けて,有機や減農薬など付加価値をつけないと採算がとれないそんな時代に,例えば特別な作物をつくりたくても農薬の登録がなされていなくて結果として断念するようなことがあって,こうした農家がそれぞれの個性が問われている時代に行政の方が対応できていないんじゃないかという声,そして行政はその時間も給料のうちだけれども,耕作で忙しい昼間に会議をしないでほしい,できれば雨の日か夜に会議はしてほしいという声等々,さまざまに伺いましたが,国の大きな流れもさることながら,地方におけるよりきめ細かい農家への支援が求められていると思います。農林水産部長の御所見をお聞かせください。
 そして,こうした中農家がやはり頼りにしているのは農協であります。分散農地所有のもと,稲作による共同作業を通じて農村集落が形成されてきたという歴史,さらには地域ごとの多様な農業形態や担い手の存在について,つまり,農家の方の心について一番理解してくださっているのはやはり農協であります。しかし,農協の合併はやむを得ないことだとは思いますけれども,金融機関がメーンじゃないんだけれども,預金量が多いという理由でATMを残して支所の中心が遠くへ行かれたら,現場から離れて非常に不便ではないか,そういうことだったら近所にある郵便局を指定口座にしたいぐらいだ,あるいは農協が土日休みで,しかも農薬などを予約制にされると土日の耕作に支障があるといった声もございます。もちろん農協の経営の効率化や高収入化ということも極めて重要なことでありますが,例えば組合員の営農指導という点では,行政とうまく役割分担,連携しながら農協の機能を強化していただく必要もあると思います。今後の農協について御所見をお聞かせください。
 私が暮らす,県庁所在地では最高の農業都市岡山市は,その形状から,ほっておけば果てしなく市街地が広がって農地を破壊して,あげく,結局は市街地も田畑もいずれ維持不可能になる危険性があると私は考えております。例えば,環状道路の計画がある郊外の市街化調整区域である地域では,論理必然性は実はないのですけれども,環状道路が通ったら市街化調整区域が外れて市街化区域になって,開通後土地の値段が上がって高値で売れるんじゃないか,そういったことを期待して,今,言ってみれば資産管理的に稲作をやられている方もおられます。ただ,うまく市街化調整区域になっても,道路に面していない田畑が売れるとは限らず,宅地並み課税に耐えながら,そして耕作地を仮に放棄したら,そこが地域のごみ捨て場になったりする,そして後から来られた方に農薬をまいちゃあいけんとか,そんなことを言われてトラブルも発生するというようなことが頻出しております。しかし,これは農家の方の責任ではないと私は思います。
 いわゆるこうした線引きの見直し権限は県にございます。線引き一つで地価が変動し,あえて言えば固定資産税も変わり,市町村財政への影響も大きなものがございますが,私はいわば中心市街地を守る郊外型大型店舗を規制するまちづくり三法見直しの流れの中で,しかし農業用地の確保に軸足を置いた線引きといったものも積極的に図る必要があるのではないかと思います。こうした観点について,市町村との連携を含めて,土木部長の御所見をお聞かせください。
 さらに,地域農業を取り巻く情勢は大きく変わって,農業水利施設の管理も複雑かつ高度となってきていますが,農地の高度利用のための農業基盤整備事業の重要性は変わりません。こうした中,岡山市への農地等高度利用促進事業など4事業の補助率削減は,県の財政状況の悪化を市に転嫁するものであって,疑問であるという声が上がっております。農林水産部長の御所見をお聞かせください。
 さらに,河川敷の農地についてお伺いいたします。河川敷は,もちろん洪水等のリスクはありますが,水はけもよく,肥沃なところもあり,例えば有機栽培による露地栽培で市場価値の高い作物をつくる農地には適しているところもございます。そういった意味で,現在は河川の占用が認められる農地は採草放牧地だけで,新たな田畑を実は開くことができません。こうした河川敷の農地をうまく生かす手はないのか,希望者があれば積極的に貸し出せばよいと考えますが,いかがお考えでしょうか,土木部長にお伺いいたします。
 関連して,河川管理についてお伺いいたします。さきの地方制度調査会の答申によれば,道州制が導入されれば一級河川が国の管理から移るとのことでございますが,国と県の河川管理の違いは,県庁前のゴルフ場並みに整備された旭川と雑草木が茂る笹ヶ瀬川のような二級河川の河川敷を比較すれば明らかであります。県の河川管理の考え方は,基本的にいじらないということでありますが,私は,河川敷は,農地やゲートボール場やマウンテンバイクのコース等に積極的に活用されればある意味でいい形のアダプトになると考えております。岡山ならではのそうした河川管理の方法はないものか,土木部長の御所見をお聞かせください。
 また,児童生徒に対して,自然に親しみ,豊かな心をはぐくませる農業に対する子供たちの理解の向上と関心の醸成を図るため,小中学校教員に対する農業に関する研修,学童農園の指導,地域の子供たちが農業を体験する組織活動への支援等を行っていく必要があると考えますが,教育長の御認識をお知らせください。
 最後に,安心して暮らせる安全な地域社会の確立を標榜して交番・駐在所の再編が行われていますが,郊外や農村部では不在駐在所が問題になっています。防犯パトロールを組織しても,肝心の拠点となるべき駐在所の駐在さんは,聞けば,例えば,ほかのエリアの犯罪捜査に応援に行っているので地域におられないことがしばしばあるという声を聞きます。365日・24時間地域の目があるとすれば,本当にお気の毒でありますが,こうした不在駐在所の対策について県警本部長にお伺いいたします。

(知事)  続いて,農政等についての幾つかの御質問をいただきました。
 まず,農業構造改革の流れに対する認識等でありますが,国は,一連の政策改革は農業従事者の減少や高齢化,耕作放棄地の増大など,我が国農業が危機的状況にある中で,小規模農家,高齢農家などを初め,多様な構成員から成っております地域農業を,担い手を中心として地域の合意に基づき再編しようとするものであるとしております。私といたしましては,これまでの一連の改革の方向は,担い手を中心といたしまして,生き生きとした農業・農村の再生を図ろうとするものでありまして,現場においては,議員御指摘のとおりそれぞれ困難なこともあろうかとは思われますが,厳しい時代の要請にこたえて,「選択と集中」の方向に沿ったものではないかと受けとめております。
 既存農家の支援でありますが,農家に生まれた若い方々が,十分に農業で食えるという夢を持てる,そういう仕組みの例といたしまして,両親が経営する農地の一部を借りて,小面積で収益の上がるピオーネ等の果樹や,あるいはトマト等の園芸作物を栽培する形態での分離独立型の農業参入の例があります。毎年100人以上あります新規就農者の8割は農家出身の方でありまして,その中には今申し上げましたような形で就農しているものもあります。県といたしましては,このように意欲ある農業参入者に対しまして,経営や新品種・新技術導入の指導を行いますとともに,低利融資あるいは農地の集積などの支援を行って,専業農家としての育成を進めております。また,兼業農家でありますが,集落営農組織や産地の構成員といたしまして活躍していただいている方も多くおられまして,そのような形で専業農家とともに,本県農業を支えていただきたいと思っております。
 今後の農協のあり方でありますが,お話の営農指導につきましては,県内系統組織がみずから営農指導体制の整備に努めておりまして,その結果,過去3年間で営農センターは26カ所から35カ所に,営農指導員は290名から320名にふえておりまして,また,来年度から一般的な相談に当たる営農相談員の養成にも取り組むこととしております。行政との連携・分担でありますが,一般的な作物の技術指導は基本的に農協の指導員が対応し,新規作物や新たな産地づくりは県の普及員と連携いたしまして,そして全く新しい作物の導入や原因不明の病気の発生など,極めて困難な事案は農業試験場も連携するというのが一つのあり方でありまして,農家に密着した農協の姿ではないかと,このように私は考えております。

(農林水産部長)  農業参入を促進する施策に関連いたしまして,農地取得の下限面積の見直しについてでございますが,久米南町,旧北房町など5地区で,10アールまでの下限面積の緩和が行われているところでございます。これらの地区では,高知県や千葉県からの定年帰農によるIターンでございますとか,会社を早期退職し,家族ぐるみでトマトの有機栽培に取り組むなど,多様な参入が図られております。本県といたしましては,さらに野菜や花などを栽培したいという参入者のさまざまな意向にこたえられるよう,地域の実情に応じて弾力的な下限面積の設定を行うことにより,地域農業の推進につなげてまいりたいと考えております。
 農地情報の提供等についてでございますが,県では8年から農地情報の電子データベース化を指導いたしておりまして,合併前の旧市町村レベルでございますが,既にデータベース化した農業委員会が35,これを高度化して農地地図情報システムとしたものが15に達しており,このうち2町が本年度その情報をホームページで公開し,新たに1町がデータベースの構築に着手したところでございます。これらの情報を利用した農地のあっせんについては,農業委員会が農地あっせん基準を定めてあっせんを進めており,県としては,これらのシステムの円滑な導入・運用を通じて意欲ある担い手に農地集積が進むよう,市町村及び農業委員会を指導・支援してまいりたいと存じます。
 生きがい農業についてでございますが,お話のように,高齢者の方々が自然の中で土に親しみ,体を動かして心地よい汗を流すことは,大いに意義があるものと考えております。しかし,県といたしましては,このような考え方を一歩進めて,より生きがいの持てる取り組みとして,農産物の青空市への出荷,さらには主要作物の産地を支える担い手として,ある程度の規模と専門性を持った農業を営んでいただき,生涯現役で意欲を持ってその能力と経験を発揮し,地域農業の一翼を担っていただければと考えておりまして,そのような方向での支援を考えてまいりたいと存じます。
 農家に対するきめ細かい支援についてでございますが,農業試験場では,イチゴの高設栽培など,産地や農家の要望に沿った新技術やおかやまオリジナルリリーなど新品種の開発等に取り組んでおりまして,農業改良普及センターでは,県下約220カ所に展示圃等を設置し,おかやま夢白桃の普及,ピオーネの省力栽培,天敵を利用した減農薬栽培等の実践的な技術指導を行っているところでございます。さらに,各地域に市町村,農協,普及センターで構成する技術者連絡協議会を設け,地域農業の課題を十分把握し,農家や地域の多様な要望に対応できるきめ細かい活動を行っております。今後とも,市町村や農協等と連携して,現場に密着した技術指導や特色ある産地づくりなど,きめ細かい農家への支援を行い,本県農業の発展に努めてまいりたいと存じます。
 最後に,土地改良事業の補助率削減についてでございますが,これは地方分権時代の流れを踏まえまして,県と市町村の適切な役割分担の見地から,市町村等が実施する国庫補助事業への県の上乗せ補助を見直すものでございまして,防災対策や生活環境の整備の分野など,県民の安全の確保や生活に密着する部分については補助率を据え置き,県民生活や市町村財政への影響をできるだけ軽減するよう配慮しているところでございます。お話の土地改良事業の重要性は県としても十分認識をしておりまして,必要な公共事業費総額をできるだけ確保し,農家や市町村の要望におこたえするためにも,負担を分担していただきたいというものでございまして,何とぞ御理解を賜りますようお願い申し上げます。

(土木部長)  次に,農地確保のための線引きについてでございますが,都市計画は,農林漁業との健全な調和を図りつつ,健康で文化的な都市生活や機能的な都市活動を確保するために定めるものでございます。計画の策定に当たりましては,市町村が主体となりまして,農地の確保と調和も図りながら,線引きも含めましたまちづくり計画の策定を行っており,県といたしましては,広域的な観点から市町村の意向も尊重しながら適切な支援・協力を行ってまいりたいと存じます。
 次に,河川敷の農地についてでございますが,河川敷の占用につきましては,治水上,利水上の支障がない場所で河川空間を有効活用した公園や公共性の高いスポーツ施設,また,河川を利用するために設ける施設など,一定の基準に基づきまして認めているところでございます。河川敷の農地を貸し出してはどうかとの御提案をいただきましたが,河川敷の田畑につきましては,河川敷を耕すことで土が水に流されやすくなり,削られてしまうなど,河川の弱体化につながり,治水上の支障となるおそれがあるため,田畑としての新たな占用は認めていないので,御理解を賜りたいと存じます。
 最後に,県独自の河川管理についてでございますが,ゲートボール場,公園など,公共性があり,治水上,利水上の支障がない場合は,河川敷の有効活用の観点から占用を認めてきたところでございます。県では,県民の方々との協働の観点から,おかやまアダプト事業といたしまして,地元の方々に御参加をいただきながら,河川の清掃や堤防等の草刈りを行うなどの取り組みを行っているところでございます。今後,岡山ならではの新たな河川管理の方策につきまして,河川のアダプト制度の充実に努めるなど具体的に検討してまいりたいと存じます。

(教育長)  児童生徒の農業に対する理解の向上についてでございますが,お話のような教員に対する研修や児童生徒への指導,組織活動への支援につきましては,現在,県や市の農業関係部局の支援のもと,モデル事業として実施をされております。学校では,こうした事業を活用いたしますとともに,生活科や総合的な学習の時間でも,学校に近い田畑を借り,指導者を招いて農作業の進め方などを学び,農業体験に取り組んでいるところもございます。私といたしましては,農業に関する学習や体験を通して自然に親しむとともに,汗を流して働くことの厳しさや喜びなどを体験することは,農業への理解を進め,子供たちに豊かな心をはぐくむために大変意義深いことと考えておりまして,学校や地域の実態に応じたさまざまな体験学習が充実するよう働きかけてまいりたいと存じます。

(警察本部長)  農村部等の不在駐在所対策についてでありますが,駐在所は,勤務員が駐在所施設に居住し,パトロールや巡回連絡など,地域に密着した活動を行うことによって,地域の生活安全センターとして,地域住民の安全と安心のよりどころとなっているところであります。このため,駐在所勤務員につきましては,極力長期にわたって不在とならないよう,勤務計画の策定に配意しているところでありますが,議員御指摘のとおり,警察署の総力を挙げて取り組まなければならない事件・事故が発生した場合などは,捜査員等の人員不足を補うため,駐在所勤務員を引き揚げているのが実態であります。不在となった駐在所につきましては,駐在所勤務員の配偶者に対し,必要な助言やきめ細かい連絡を行うとともに,不在となった駐在所の管内において,パトカーや隣接交番,駐在所勤務員によるパトロールを実施するなど,地域住民の安全・安心を確保しているところでありますので,御理解を賜りたいと存じます。



<平成17年2月定例会>(2005年3月8日)

(佐藤)  次に,攻めの農業についてお伺いいたします。
 知事は,提案説明の中で,「岡山国体等を契機とした,県産農林水産物の販売宣伝活動や,首都圏に向けた情報発信,マスカットなど県産ブランド農産物等の東アジアへの輸出を目指す海外市場開拓など,攻めの農業を展開する」とおっしゃられました。2005年度以降の農政全般の指標となる食料・農業・農村基本計画の原案が2月24日にまとまりましたが,国内農業は世界的にも珍しい大規模な集団化で生き残りを目指していますが,さらにこうした守りから攻めの農業への転換は,まさに国策と言えると思います。海外の安い農産物に押されることの多い日本の農業の競争力を育てて,安心・安全で高品質な我が国の農産物の輸出拡大も図っていこうと,農水省やジェトロ,全国の自治体は先を競って支援している状況であります。しかも,こぞって,ターゲットは中国,上海,大連,台湾等で,すべて東アジアであります。国内農産物については,消費者に選択をされるように,意欲と能力のある担い手の育成など,農業の構造改革を含めて,農産物の品質の向上,また低コスト化を図っていく必要があるわけでありますけれども,つまりはこの国内における競争の舞台が,日本から世界に変わるわけであります。日本ですら不安に思う生産農家が,今後は世界が舞台だと言われて,不安がないわけがありません。要は,日本で勝てないと世界でも勝てないわけで,まずは国内の販路拡大について,首都圏等大消費地を中心に,どのような成果が上がっているのかをお伺いいたします。
 そして,問題は,県産ブランド農産物と言われる高品質な農産物の種目であります。岡山県の場合,当面はマスカットやピオーネなど,岡山ブランドの高級ブドウの輸出が有望と考えておられるようでありますが,まずは夢づくりプランで,作付面積1,000ヘクタールと,早急かつ集中的な産地の拡大を図るピオーネでありますけれども,実際のところ国内において,生産拡大による価格の高値安定の担保というものはあるのでしょうか。見通しを農林水産部長にお伺いいたします。
 とりわけ,ピオーネの輸出により,それだけ高く売れるんならばということで,輸出先が国内生産を始めて,日本への逆輸入による価格下落は起こり得ないのか,既に先方は,1,000ヘクタールの農地を確保しているという話も聞きますが,攻めの農業に倍返しの危険はないのか,長期的な勝算に基づくものであるのか,農林水産部長にお伺いいたします。
 また,昨年12月定例会で,小林議員が「県はピオーネは勧められますけれども,例えばネオマスカットにはちょっと冷たくないですか」というニュアンスの質問をされましたが,ネオマス以上にマスカット・オブ・アレキサンドリアについて冷たいのではないかという生産農家の声がございます。まずもって,知事はアレキについて,どのように思っておられるのでしょうか。私は,この陸の真珠,ブドウの女王と称される最高級果物の輸出に関しては,あれだけの手間をかける高品質な農産物を,輸出先がやすやすと生産できるわけはないと確信もいたしますけれども,輸出を誘導されるのであれば,生産者団体と一体となって,輸出体制整備をしていくための説明と理解が必要であって,何よりもそれ以前に,後継者不足の解消や若木への更新等による品質の向上や,施設整備のためのさらなる支援を,まずは積極的に行うべきと考えますが,いかがでしょうか,農林水産部長にお伺いいたします。
 ところで,農林水産物を通じた国際協力について,国際協力自体はすばらしいことでありますけれども,農林水産分野での本県の進んだ技術を習得していただくために,アジア諸国を中心に研修生を受け入れたり,専門技術員の海外派遣を通じた技術移転を進めているわけですが,結果的に,生産農家の首を絞めることにならないか,農林水産部長にお伺いいたします。

(知事)  次に,攻めの農業についてであります。
 国内での販路拡大でありますが,県産ブランド農産物につきましては,これまでに首都圏等でのトップセールスを初めといたしまして,各種販売促進フェアの開催とか,あるいは白桃,マスカット等を描いたラッピングバスの運行など,市場開拓やPRを強力に展開してきたところであります。この結果,例えばピオーネについて申し上げますと,東京市場への16年の出荷は,13年と比べまして7トンから136トンへと,シェアが0.8%から10%へと大幅に拡大いたしますとともに,他県産より約1.5倍の高値で取り引きされるなど,市場でも高い評価を得ているところであります。
 また,マスカットは,本県を代表する果物といたしまして,全国シェアの93%を占めておりまして,千両ナスも東京,大阪市場で,他県産より約1.5倍の高い価格で販売されるなど,首都圏等への販路拡大は着実に成果が上がってきているものと受けとめております。
 マスカットでありますが,一世紀を超える長い歴史と,全国シェア9割以上を誇る,まさに名実ともに本県を代表する特産果物といたしまして,「くだもの王国おかやま」をリードしてきたと私は認識しております。とりわけ,今日のマスカットがありますのも,瀬戸内の温暖な気候を生かして,他に追随を許さない先人の方々の高い技術と経験に加えまして,生産者の方々のたゆまぬ努力のたまものと,このように思っております。昨年のマスカットの初売りに際しましては,私自身,東京市場に出向きまして,トップセールスを行ったところでありまして,今後とも,県内外に向け,積極的にマスカットのPRを行いますとともに,後継者の確保,あるいはハウスの整備,若木への更新等による省力化や品質向上対策等を積極的に進めて,マスカット産地を支援してまいりたいと存じます。

(農林水産部長)  攻めの農業についてという中で,まずピオーネの高値安定の担保についてでございますが,日本一の栽培面積を誇ります県産ピオーネは,ここ10年で出荷量が約1.5倍と大幅に拡大しております。そういう中で,市場販売価格は1キログラム当たり平均836円と,高値で安定的に推移しておりまして,品質の高さが反映されているものと考えております。本県産ピオーネは,大粒,種なし,甘いと三拍子そろっており,おいしくて食べやすいと,大人から子供まで消費者の人気が高く,そしてまた首都圏等の大消費地の市場からは,大幅な出荷量の拡大の要望が強いということから,今後とも農業団体と一体となりまして,高品質なピオーネの生産出荷を努めることによりまして,引き続き高い評価を持続できるものと考えております。
 次に,ピオーネの逆輸入の危険についてでございます。本県では,長年の努力と研究によりまして,大粒,種なし化,房づくりなど,本県独自の高度な栽培技術が構築されますとともに,技術レベルの高い生産者による産地体制が形成されており,日本一の高品質なピオーネの生産とブランド化が進んでいるところでございます。こうしたことから,仮に将来,海外で生産され,我が国に輸入されたとしても,本県産ピオーネがこれまでに築いてきました信用と品質で,十分対抗できるものと考えております。
 マスカットの輸出体制の整備と産地支援についてでございます。マスカット等の輸出には,これまでも生産者の代表者の方々との意見交換を行い,そして先月,農業団体等とともに,おかやま農産物輸出促進協議会を設置したところでございます。今後の輸出につきましては,産地の意向も十分に踏まえながら取り組んでまいりたいと考えております。
 また,産地支援につきましては,月給制による実務研修を活用して,後継者を育成いたしますとともに,低コストハウスや自動換気装置の整備,また若木への更新,非破壊糖度計の導入などによりまして,省力化や品質向上に向けた取り組みに対して支援しているところでございます。今後とも,生産基盤の整備や後継者の確保を支援いたしますとともに,共進会の開催など,農業団体と一体となりまして,マスカットの生産振興に努めてまいりたいと存じます。
 国際協力による影響についてでございますが,本県の農業技術者の派遣や研修生の受け入れは,アジア諸国を中心に,農林水産業の振興による自立的発展を支援するという国際貢献の視点から,土づくりや病害虫防除,あるいは栽培管理等の基礎的な技術指導を行っているものでございまして,交流相手国の気候風土や,現在の技術レベルを考えますと,直ちに農林水産物の輸入の増加につながっているとは考えておりません。
 以上でございます。



<平成12年9月定例会>(2000年9月20日)

(佐藤)  次に,9月7日,広島県の東城町でツキノワグマがイノシシの駆除用のくくりわなにかかって衰弱しているところを発見されるという事件がありました。イノシシによる農作物への被害を防がなくてはいけないという現実が,結果として今や保護すべきツキノワグマさんに御迷惑をおかけすることになった,これは悲劇だと思います。私は岡山駅前に住んでいるので,余りクマやイノシシに出会う機会はありませんが,都市型の有害鳥獣としてのカラスと共生して暮らすのは非常に難しいものがあります。
 有害鳥獣,この問題は,国土政策,農林業政策,野生鳥獣と人間の共生のあり方等,かなり根が深いと思います。県内における有害鳥獣による農作物の被害は,平成11年度で5億円を超え,イノシシやシカや猿の被害も捕獲数も年々増加傾向にあります。原因としては,開発による自然環境破壊によってえさが不足したというよりも,中山間地域等での放棄農地がふえてえさの供給量が増し,狩猟者が減少,高齢化し,また養殖用のイノブタが野生化して,繁殖力がむしろ増大したといったことで,有害鳥獣の絶対数そのものがふえて,いわばのさばっているのだという説がありますが,どういった状況なのでしょうか,生活環境部長にお尋ねします。
 また,話してわかる相手ではないだけに,被害に遭われた農林家は,「またやられた」と,とことん生産意欲が減退すると思われますが,どういった防御策,善後策の支援がなされているのでしょうか。
 さらに,鳥や獣に県境はなく,岡山県独自の対応には限界があると思います。ここは,中国地方の中山間地域全体の総合的な対策が必要だと思いますが,あわせて知事のお考えをお知らせください。
 加えて,都市型の有害鳥獣カラスは,どの町でも深刻というより不愉快な被害を起こしていますが,有効な対策はないでしょうか,生活環境部長にお尋ねします。

(知事)  次に,有害鳥獣でございますが,これの防御策等については,県では,県下155の有害鳥獣駆除班に対する活動助成を行うとか,あるいは捕獲奨励補助を行うとか,また防護さくや捕獲さくの設置に対して助成をする等々,市町村と協力をして実施をしております。
 また,有害鳥獣によります被害というものは,中国地方各県でも近年増大をしておりまして,広域的な被害防止への取り組みというものも必要であると,私はこのように考えまして,本年度の中国地方知事会において,私の方から,実態に即した防護さく,あるいは捕獲さくの設置補助制度の充実の問題とかあるいは国における中山間地域対策の一環としての総合的な野生鳥獣被害対策の推進につきましての提案を申し上げ,関係の知事の了解をいただきまして,関係省庁に要望したところでございます。
 御指摘のとおり,この有害鳥獣につきましては,県境がないという意味におきまして,これからも中国地方各県と,そして県下の市町村とも十分に連携を図って,被害防止対策というものを積極的に講じていかなければならないと,このように考えているところでございます。

(生活環境部長)  有害鳥獣の状況についてでありますが,有害鳥獣の具体的な絶対数の動向を把握することは非常に困難でありますが,御指摘のイノシシなどにつきましては,ここ数年捕獲数がふえる一方,急速に被害が拡大しておりますこと,また,猟友会などの情報から推測しますと,お話のような生息環境のさまざまな変化によりまして分布域が拡大するとともに,やはり個体数が増加している状況にあると考えております。
 次に,カラス対策についてでございますが,都市部のカラスは多量に出されます生ごみなどをえさにして増加しまして,収集場所でのごみの散乱や早朝からのうるさい鳴き声などの被害が指摘されております。県としましては,有害駆除などによりまして,平成11年度約6,700羽のカラスを捕獲処分しておりますが,引き続きその駆除に努めるとともに,市町村を通じまして生ごみの減量や収集場所の十分な管理など,地域ぐるみでの被害防止対策を呼びかけているところであります。

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